AIで下書きが作れるようになり、簡単なデザインも自分で直せるようになると、裏方としてできることは一気に増えます。
ただ、どれだけ文章や画像の腕が上がっても、そもそもクライアントさんが何に困っているかを正しく汲み取れていなければ、作ったものはズレたものになってしまいます。
文章もデザインも、何を作るべきかが決まって初めて力を発揮するものです。
作る技術が上がるほど、何を作るべきかを見極める力の大切さも増していきます。
僕は、ヒアリングの力こそがいちばん大事だと考えています。
ヒアリングは、ほかのすべてのスキルの土台になる力です、今日は、クライアントさんの本当の悩みを引き出すための質問のコツと、仲間と一緒にできるヒアリングの練習方法をお話しします。
ヒアリングは特別な才能ではなく、コツを知って練習を重ねれば、誰でも少しずつ上達していく技術です。
依頼の言葉の奥にある本当の悩みにたどり着けるかどうかで、同じスキルを持っていても、仕上がりの満足度はまったく違ってきます。
依頼の言葉は表面上の要望にすぎない
大前提として、クライアントさんは、自分が本当に困っていることを最初から正確に言葉にできるとは限りません。
LPを直してほしい、配信を作ってほしい、という依頼の言葉は、あくまで表面上の要望です。
その裏に、本人もうまく言葉にできていない事情が隠れていることがよくあります。
本人は困っていることは自覚していても、その原因や、本当はどうなりたいのかまでは、整理できていないことがほとんどです。
依頼の言葉をそのまま受け取って作業を始めると、言われたとおりに作ったのに喜んでもらえない、ということが起きてしまいます。
例えば、更新が止まっているのでまた動かしてほしい、という依頼があったとします。
表面だけ受け取ると、止まっている配信を再開する作業に見えますが、聞いていくと、実は体調を崩して発信そのものに手が回らなくなっていた、ということがあります。
この場合に必要なのは、単なる再開ではなく、無理のないペースで回せる仕組みに作り替えることかもしれません。
依頼どおりに配信を再開していたら、また同じように止まってしまっていたはずです。
依頼の言葉の奥にある事情を知っているかどうかで、提案する内容はまったく変わってきます。
ほかにも、AIを使い始めてから逆に手が止まってしまった、という相談の裏に、案が多すぎて選べなくなっていた、という事情が隠れていることもあります。
表面的な依頼の言葉をそのまま鵜呑みにせず、その裏にある事情まで質問で引き出す、これがヒアリングの力です。
本人は、AIをうまく使えていない自分が悪い、と感じていることも多く、そこを丁寧に聞いていくと、必要なのは使い方の説明ではなく、広げた案から絞り込む手伝いだった、ということが見えてきます。
こうした裏側の事情に気づけるかどうかで、同じ依頼でも、提案できる内容の深さがまったく変わってきます。
本音を引き出す四つの質問のコツ
一つ目は、最初はなぜを聞きすぎないことです。
いきなり、なぜ止まっているんですか、と聞くと、詰められているように感じさせてしまいます。
まずは、最近どんな感じですか、といった答えやすい聞き方から入ってください。
答えやすい質問から入ることで、相手の緊張がほどけ、少しずつ話してもらいやすい空気ができていきます。
ヒアリングは、相手を問い詰める場ではなく、相手が話しやすい場を作るところから始まります。
二つ目は、いつから、何がきっかけで、を聞くことです。
状況が変わったタイミングを聞くと、本人も気づいていなかった原因が言葉になって出てくることがあります、三つ目は沈黙を怖がらないことで、質問したあとに少し間が空いても、相手が考えている時間だと捉えて待ってあげてください。
人は話しながら考えを整理していくものなので、その時間を奪わないことが大切です。
沈黙のあとに出てくる言葉ほど、本人の本音に近いことがよくあります。
四つ目は決めつけないことです、きっとこれが原因ですよね、と先回りすると、相手は本当のことを話しにくくなります。
あくまで質問で引き出し、答えは相手の口から出してもらう、という姿勢を持ってください。
答えを相手の口から出してもらうと、クライアントさん自身も、自分の本当の悩みに気づけるようになります。
決めつけずに聞くことは、相手への敬意を示すことでもあります。
四つのコツは、どれも特別な技術ではなく、相手のペースを大切にする姿勢から生まれるものです。

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詳しく見る二人一組のロールプレイで練習する
ヒアリングは、頭で理解するだけではなかなか身につきません。
そこでおすすめしているのが、二人一組のロールプレイです。
進め方は、次のとおりです。
- 一方がクライアント役、もう一方が裏方ワーカー役になる
- クライアント役は事前に本当の悩みを一つ決めておく
- 最初はその悩みとは少しズレた表面的な言葉で相談を始める
一人で頭の中で練習するより、相手がいる方が、実際の会話に近い緊張感の中で練習できます。
最初の相談がズレた言葉から始まるのは、実際の現場でもよくあることなので、このズレを見抜く練習になります。
裏方ワーカー役は、質問のコツを使いながら、十分程度の会話の中で、その本当の悩みにたどり着けるかを目指します。
クライアント役は最初から本音を話しすぎないようにして、信頼できると感じたら少しずつ話す、という実際の現場に近い流れを再現してください。
最初のうちは、時間内に本当の悩みにたどり着けなくても構いません。
どこで話が止まったのかを知ることの方が大切です。
本音を少しずつ話すクライアント役がいることで、信頼を積み重ねながら質問を深めていく感覚がつかめます。
終わったら必ず振り返りをします、どの質問で本音が出やすくなったか、どの質問で身構えてしまったかを、クライアント役から教えてもらう、これを何度か繰り返すうちに、質問の引き出しが少しずつ増えていきます。
実際にクライアント役をやってみると、どんな聞かれ方をすると話しやすいのかが体でわかるので、役を交代しながら練習するのもおすすめです。
振り返りのたびに、うまくいった質問をメモしておくと、自分だけの質問の引き出しが少しずつ育っていきます。
答えを出すのは、最後まで聞き切ってから
ロールプレイをやってみると、多くの人が同じところでつまずきます。
それは、相手の言葉を聞いた瞬間に、すぐ解決策を提案したくなってしまうことです。
それならこうしたらどうですか、と質問を重ねる前に答えを出してしまうと、相手が本当に話したかったことにたどり着く前に会話が終わってしまいます。
答えを急いだ提案は、相手の本当の悩みから外れていることが多く、結局作り直しになってしまうこともあります。
答えを出したくなったら、その前にもう一つだけ質問を重ねてみる、それだけで会話の深さが変わります。
裏方として役に立ちたい気持ちが強い人ほど、早く答えを出そうとしがちです。
でも、クライアントさんが求めているのは、速い答えより、ちゃんと聞いてもらえた実感です、まずは最後まで聞き切る、答えを出すのはそのあとで十分です。
聞き切った実感があるからこそ、クライアントさんも、この人になら任せたい、と思えるようになります。
聞くことに徹した時間は、決して遠回りではなく、いい提案をするための一番の準備です。
最後まで聞き切った上で出した提案は、相手の言葉から生まれているぶん、クライアントさんにとっても納得しやすいものになります。
よく聞いた人の提案は、そのまま相手の言葉の続きになります、ヒアリングの質が上がるほど、LPも配信もデザインも、その人にぴったり合ったものを作れるようになります。
聞く力が育つほど、作るもののズレが減り、修正のやり取りも少なくなっていきます。
まとめ、今日のポイント
ヒアリングの基本は、次の四つです。
- 依頼の言葉は表面上のものと捉える
- なぜより先に、いつから、何がきっかけで、を聞く
- 沈黙を怖がらない
- 決めつけずに相手の言葉で答えを引き出す
そしてその感覚は、ロールプレイを重ねることで少しずつ体に入っていきます。
質問の引き出しが増えるほど、どんなクライアントさんとも落ち着いて話せるようになります。
最初は時間がかかっても、練習を重ねるうちに、自然と相手の本音に近づける質問が出てくるようになります。
聞く力は、才能ではなく練習で伸ばせる技術です、仲間と一緒に何度も試しながら、クライアントさんの本音にたどり着ける質問の引き出しを増やしていきましょう。
ヒアリングが上達すると、作る仕事のすべてが、クライアントさんにとって納得のいくものに変わっていきます。
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